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【科学】中学生でもわかる「レールガン」の原理と利点・欠点を解説【とある科学の超電磁砲の豆知識】

2026年2月27日

レールガン。

それは一般的に「電磁砲」と言われています(実は両者は異なるものであり誤りですが、これは後述します)。

 

 

とある科学の超電磁砲」で知った人も多いですが(というかこの漫画、アニメが有名にしすぎた)、実はずっと昔から考えられていたものです。

しかし、実用的ではない(あまりに大型設備が必要+コストに見合わない)という理由で、昔は軍事転用はされませんでした。

いわゆる「ロマン砲」というやつですね。

 

 

今回はガチ理系の設計技術者は中学生でもわかるように、「レールガン」を解説します。

大学院までいき、4大力学である

・機械力学

・材料力学

・熱力学

・流体力学

に加えて、電磁気学、制御学まで修めた自分ならレールガンの原理も容易く解説できます。

 

 

目次

 

 

「レールガン」の特徴は?

レールガンの特徴は何と言っても「電気の力」を借りて射出物を飛ばす点にあります。

通常、砲と言えば爆薬(火薬)の爆発時の推進力を使って弾などを発射します。

 

レールガンは火薬を使わず、「電気の力(電力)」で射出物を飛ばすのが最大の特徴です

 

 

「レールガン」の構造は?

構造は大砲と同等レベルで簡単です。

 

①電源装置に繋がった2本のレールを用意

②そのレールの間に射出物を挟む

③レールに電気を流して、射出物を発射

 

「え?これだけ?」と思いますが、これだけです。

 

なんと、

・電源装置

・導電レール(2本)

・射出物

この3種類だけで作れるのです。

 

 

レールガンの構造原理

 

 

 

【レールガンの原理】なぜ「電気の力」で物を飛ばせるのか?

ここが重要です。

中学生程度の物理の知識があれば、簡単に説明可能です。

 

 

第1の知識:アンペールの法則

アンペールと言えば電流の単位「A(アンペア)」の元となった人です。

 

アンペールの法則、通常「右ねじの法則」というのがあります。

この法則はいたって単純で、

①電流が流れると磁場が発生する

②電流が流れる方向に発生する磁場の回転方向は右ねじの向きと一致する

の2つです。

 

アンペールの法則(右ねじの法則)

 

 

この磁場の力の大きさの説明は大学の電磁力学(工学分野)の知識が必要になります。

(ビオ・サバールの法則の積分と一致するなど)

 

今回の説明はそこまでしません(説明するとなると、そもそも上述の通り中学生や高校生の知識では説明できないため)。

重要なのは「電流の方向と発生する磁界の向き」ということです。

 

 

第2の知識:フレミングの左手の法則

これも物理で苦しんだ人も多いでしょう。

あのテスト中に左手をごちゃごちゃと向き変えて問題を解いたというあれです。

 

この法則は、

導体に電流が流れる際に、ローレンツ力が発生する

その導体に作用する力、磁束(磁場)の方向、電流の流れる方向は、それぞれ左手の指の向きで説明できる

というものです。

 

フレミングの左手の法則

 

上記の文字で

F:発生力(ローレンツ力)の向き

H:磁束(磁場)の向き

I:電流の流れる向き

 

 

このローレンツ力の向きと力がレールガンの根本原理となります。

 

 

この2つの知識があれば、レールガンを構築できます。

 

 

レールガンの原理

まず、レールガンは「レール+射出体(導体)+レール」という構造になります(レールは平行)。

片方のレールに電気を流すとレールの周囲に磁界が発生します(右ねじの法則による)。

ここで、平行に配置された面では磁界は面垂直方向に向くことになります

 

 

そして、電流の流れる方向と、磁界の向きが分かれば、導体にかかる力(ローレンツ力)の向きもわかります。

この向きが、レール平行な向きに発生することになります

 

 

ゆえに、レールガンは「射出体はレールまっすぐな方向(レールに平行な方向)に飛ぶ」ということになります。

 

 

原理の確認なら家でもできる

この原理の確認なら、本物のレールガンでなくても確認できます。

導体レール2本(金属製の筒)と、金属の球があれば確認できます。

 

①金属製の筒(鉄パイプなど)を平行に配置する

②金属製の球を①で配置したレールの上に乗せる

③片方のレールに正極(+極)、もう一方を負極(-極)に電源に接続

④電圧、電流を上げて、金属球の動きを見る

 

と言った感じです。

電源装置の規模が大きければ出力を上げて球を飛ばすことも可能です(感電のおそれや思わぬ事故が起きるのでやめましょう)。

 

 

 

レールガンの利点(メリット)

①射出速度の調整や、理論上は光速付近までスピードを上げられる

通常の大砲などの場合、火薬の量=爆発力が射出威力の限界です。

それも大規模の火薬を使う場合は大型になりますし、限界も知れています。

しかも、威力の微調整などは難しいです。

 

しかし、レールガンの場合、大型レールと大規模電源が必要になりますが、用意さえできれば電源出力を上げることで、理論上は「光速付近」まで射出速度を上げられます

また、出力の調整もできて、一般大砲では難しい調整も可能です。

 

 

速度は…重さ。光の速度で蹴られた事はあるかい(ワンピースの黄猿の言葉)

エネルギーを示すうえで、力学方程式上ではある意味正しい表現です。

(E=mc^2。ただし、速度と重さは別次元のものなので、あくまでエネルギーを示すうえでの言葉の綾)

 

 

 

②軽い物体でも超威力にできる

また、運動方程式のF=maの式から、小さな軽い射出体でも加速度を上げることで凄まじい力を発揮させられます。

大砲と言えば、威力アップのために重い鉄の砲丸を使用していましたが、その気になればパチスロの球でも超威力で飛ばせます。

 

 

③短時間で物体を発射+目標地点に到達できる(タイムラグが少ない)

通常、火薬爆発は燃焼が必要です。

導火線式の大砲を思い浮かべれば分かりますが、実際の物体射出+目標に到達まで時間差があります。

電動式の場合はこのタイムラグを非常に抑えられます。

充電さえできていれば目標捕捉から瞬間的に対象を撃墜できます(=距離が長くても短時間で到達可能)。

 

 

 

レールガンの欠点(デメリット)

もちろん、デメリットも存在します。

 

①超威力を発揮するためには大規模設備が必要

これが最大の欠点です。

威力の高さ=規模の大きさ」はこれにも当てはまります。

 

レールの長さ+電源の大きさ=威力がレールガンの基本です。

レールが長ければ長いほど、電源設備が大規模であればあるほど、威力が上がる。

逆に言えば、レールの長さや電源設備の限界が、威力の限界になります。

 

超大規模導電レール、超大規模発電設備(それこそ原子力炉レベル)があればすさまじいパワーを発揮できますが、そんな設備を容易に用意できるほど甘くはありません。

 

 

②高圧、高電流に耐えられる導電レールが必要

電気を流すと熱が発生するのは、電球で知っている人が多いでしょう。

当然、凄まじい電流を流すと、凄まじい熱が発生します。

その熱に耐えられるだけの素材でレールを作り上げる必要があるのも欠点です。

 

 

③射出体も加速度に耐えられるものが必要

「作用・反作用の法則」でもある通り、物体射出時に、物体に反作用の力がかかります。

これも加速度が高ければ、力も大きくなります。

下手をすれば射出前に焼き切れる可能性もあります。

 

 

④ローレンツ力の分力に耐える頑丈なレールが必要

ローレンツ力は確かに射出方向に向きますが、理論上完璧に並行とは限りません

傾きがあれば分力が発生し、横方向にも力が発生します

射出能力が高ければ、この分力も大きくなります。

レールは可能な限り平行でなければ、余計な力が発生するので、レールが曲がらないような頑丈な素材が必要です。

 

 

⑤射出物は導電体でなければならない

ローレンツ力は電気が流れて初めて発生する力なので、絶縁体では射出体として成立しません。

必ず、電気が流れるような物体にする必要があります。

ゆえに、ゴムなどの絶縁抵抗が高い物体は使えません。

 

補足すると、ゴムは完全に電気を通さないわけではないので、超高電流を流せば電気が流れますが、流れる前に焼き切れたり(抵抗で電気が熱(ジュール熱と言います)に変化する)、そもそも無駄な電気を使うのでやはりレールガンでは使い物にならない物質です。

 

 

実用性はどうなのか?

中国やアメリカ、欧州ヨーロッパに加え、最近(2023年)に日本も海上自衛隊が洋上実験を行っています。

相変わらず、設備などの問題はありますが、実用段階までは開発が進んでいます。

ロマンを感じますね。

 

日本が開発したレールガン

 

 

ただし、いずれも「滅茶苦茶な大型」であることに変わりはありません。

軍事目的なら相手の飛翔体(ヘリなど)を撃墜させるには大きな射出体が必要になり、当然ながら大きな力が必要になります。

大型の導電レール+大型電源が必要なため、必然的に大きなものになってしまいます。

 

 

 

「電磁砲」と「レールガン」は別物

よく、電磁砲とレールガンが混同されていますが実情(厳密的)は違います。

まず前提として「レールガンには磁性体となるものが必要」と勘違いされていますが、磁性体である必要はありません

導電体と磁性体は別物です。

 

導電体は「電気を流すもの」であり、「磁性体は外部磁界に反応して帯磁するもの」です

例をあげれば、鉄は磁性体(磁石にくっつく)ですが、アルミニウムは非磁性体(磁石にくっつかない)ですね。

どちらも電気を流す導電体ですが、磁性体に違いがあります。

 

ただし、磁界の強さ=ローレンツ力の強さにつながるので、磁石を使用して威力を高める工夫はされています。

 

ただし、電磁気学の分野で、電磁気力を利用した兵器という点でほぼ同じものとされています。

 

 

 

レールガンが無反動砲というのは噓

レールガンには反動がないと言われていますが、嘘です。

やはり、力が発生する以上は「作用・反作用の法則」が適用されます。

 

電力であるため、爆薬のような反発はないですが、超高電流では「プラズマ」が発生します

 

加えて、レールに射出体が乗っている以上、レールとの摩擦力やローレンツ力の反作用力が発生します

なので、「レールガンが無反動砲というのは嘘」です。

 

 

 

レールガンを自作すると法律違反になるか?

これだけの(作れればの話ですが)超兵器ながら、小型であれば自作可能です。

小型であってもレールガンを作れば法律違反になるのでしょうか?

 

実は銃砲刀剣類所持等違反には該当しません。

法律の定めるところによる銃、砲、刀剣いずれにも該当はしません。

しかし、殺傷性が認められれば法律違反に当たる場合もあるので、安易に自作して持ち歩くなどはやめたほうがいいでしょう。

 

 

 

レールガンはロマン砲ながら実用の域に入っている

このように、単純な構造にして、設備が整えば容易に武器として使用できることから研究や改良が加えられて実用化の域に十分入っています。

 

 

「とある科学の超電磁砲」はやはり空想の領域

ただし、当然ながら「とある科学の超電磁砲」のように個人単位で電気の力でコインを飛ばすことは不可能です

 

とある科学の超電磁砲(御坂美琴)

 

 

不可能な理由①:人間という導体に超高電力を流せない(そもそも発生させられない)

真面目に考察する必要もなく、コインを超高速で飛ばすなら凄まじい電力が必要です

人間の生身にそれだけ電気を流せば、発射前に一瞬で感電死です

(人間の場合、電流100mAで即死レベルです)

仮に流すとすれば、表面は導体+人との間に超強力な絶縁体が必要です。

 

仮に用意できたとしても、出力ミスで一瞬であの世行きです。

(雷に直撃するなんてレベルじゃないです)

 

 

不可能な理由②:射出体がローレンツ力の反力に耐えられない

加えて、コインのような微小物体に超高電流を流して発射すれば反作用の力で瞬時に蒸発します

これでは発射できる力があっても無意味になりますね。

 

 

不可能な理由③:それ以前に導電レール2本で発射していないのでレールガンですらない

これを言ってはお終いですが、レールガンは「レールガンの原理」でも説明した通り、射出体を2本の平行レールで挟んで成立するものです。

両腕で挟んで射出するならわかりますが、「親指一本でレールガンのように発射」は原理とあまりに乖離しています

 

以下のシーンはもはやレールガンですらないです。

ただの電磁パンチです。

(そもそも電気の意味は何なのか?物理系観点では滅茶苦茶理論ですが、演出のためと割り切りましょう)

もはやレールガンですらない…

 

 

仮に発射できたとしてもその反作用で遥か遠方に吹っ飛ばされますね。

ここは真面目に考えず楽しむのが漫画やアニメの醍醐味ですね。

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